解答例を先に読むと速く身につく——自力で解くより、時間もミスも減った
Learning / 実践メソッド

解答例を先に読むと速く身につく——自力で解くより、時間もミスも減った

新しい範囲を、いきなり問題から解こうとして手が止まる。じつは、先に解答例を1つずつ読んでから似た問題を解くほうが、解けるようになるまでが速いという研究があります。中学生を対象にした数学の実験でみられた傾向を、資格の勉強や新しい業務を覚えるときの手順にまとめました。

資格のテキスト、初めての業務の手順書、久しぶりの独学。新しい分野に入ると、練習問題を前に手が止まります。

「まず自分で解いてみよう」と粘るほど、時間だけが過ぎていく。そんな覚えはないでしょうか。

じつは、いきなり解くより、先に解答例(お手本の解き方)を1つずつ読むほうが、速く身につくことがあります。手が止まって考え込む時間は、そのまま学びになっているとは限りません。

先に解答例を読んだ生徒のほうが、あとのテストで速かった

この、解答例で学ぶやり方を例題効果と呼びます。スウェラーとクーパーという2人が、1985年に確かめました。

対象は、中学生にあたる学年の生徒22人。数式を変形する問題を練習させ、2つのグループに分けます。片方は解答例を読んでから似た問題を解き、もう片方は最初から自力で解きました。

練習の量も、解く問題も同じ。違うのは、解答例を先に読んだかどうかだけです。

そのあとの共通テストで、差が出ました。解答例で学んだグループは1問を平均43.6秒で解き、ミスは0.18回。自力で解いたグループは78.1秒かかり、ミスは1.64回でした。

練習のあとのテスト結果を比べた横棒グラフ。解答例を先に読んで学んだグループは1問を平均43.6秒で解き、ミスは0.18回。いきなり自力で解いたグループは78.1秒かかり、ミスは1.64回。練習も問題も同じで、違いは解答例を先に読んだかどうかだけ。解答例で学んだほうが速くミスも少ない様子をバーの長さで示す図
図1: 先に解答例を読んだほうが、あとのテストで速く・ミスも少なかった(当サイト作成)

見てのとおり、先に解答例を読んだほうが、あとのテストで速く、ミスも少なくなっています。しかも練習にかけた時間は、解答例を読んだグループのほうが短く済んでいました。

ただし、これは数式の練習での結果です。1グループ11人と人数は少なく、出た差は「同じ形の問題」に限られていました。断定ではなく、そういう傾向がある、として受け取るのが妥当です。

なぜ、自力で悩むより速く身につくのか

自力で問題を解くとき、頭の中では「ゴールにたどり着く道」を探し続けます。あれを試し、これを試し、行き止まればまた戻る。

この探し回る作業は、ワーキングメモリ(一度に考えられる作業机の広さ)を使い切ってしまいます。机が答え探しでいっぱいだと、「解き方の型」を覚えるための余白が残りません。

だから、たくさん解いたのに解き方が身についていない、ということが起きます。

解答例は、この答え探しを肩代わりしてくれます。ゴールはもう見えているので、頭は「どういう順で、なぜこう変形するのか」という型そのものに集中できます。

手が止まって考え込む時間は、実力になっているように感じます。でも、その多くは型を覚える作業ではなく、出口を探してさまよう時間です。

効くのは「まだ解けない」うちだけ

気をつけたいのは、この効き方が最初の段階に限られる点です。

解き方がひととおり身につき、自分で解けるようになると、話は逆になります。もう型を知っている人が解答例を読み続けても、得るものは少ない。この段階では、自分の手で解く練習のほうが力になります。専門家になるほど解答例の利点が消えることは、複数のレビューでも指摘されています。

だから使い方は、こう切り替えます。まだ解けないうちは、解答例を写す。解けるようになったら、解答例を閉じて自分で解く。

似た話に、覚える前に問題を解くやり方があります。あちらは「答えを知らずに、まず解いてみる」もので、一見すると正反対です。

違いは目的です。単語や事実を覚えたいなら、先に問うて外すほうが記憶に残る。手順の型を覚えたいなら、先に完成した解答例を見るほうが速い。どちらを使うかは、「何を覚えたいか」で選び分けます。

今日から試す「解答例で学ぶ」手順

特別な教材はいりません。今ある問題集と解答を、そのまま使います。

  1. 新しい範囲は、いきなり解かず、まず解答例を1つ読んで手順を追う
  2. 読んだらすぐ、似た問題を1問だけ自分で解く(例→問題→例→問題の順で交互に)
  3. 解答例の各ステップで「なぜここでこう変形するのか」を一言、声に出す
  4. 手順に慣れて解けてきたら、解答例を閉じ、自力で解く回数を増やす

解答例を全部読んでから問題をまとめて解く、より、1つ読んで1問解く、と交互に挟むほうが身につきます。

各ステップを自分の言葉で説明すると、さらに定着します。この「なぜ」を言葉にする学び方は、「なぜ」を自分の言葉にする勉強法にまとめました。

型がひととおり入ったら、数種類を混ぜて解く練習に進むと、本番で使える力になります。学び方そのものを鍛える発想は、学びの柱でも扱っています。

新しい分野で手が止まったら、粘る前に解答例を1つ開く。答えを写すのは、ずるでも近道でもありません。型を最短で頭に入れるための、まっとうな一歩です。まずは今日の1問を、解答例を読んでから解いてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 新しい範囲は、いきなり解かず、まず解答例を1つ読んで手順を追う
  2. 解答例を読んだら、すぐ似た問題を1問だけ自分で解く(例→問題の順で交互に)
  3. 各ステップで「なぜここでこう変形するのか」を一言、声に出す
  4. 解けるようになったら、解答例を閉じて自力で解く回数を増やす

出典・参考

  1. Sweller, J., & Cooper, G. A. (1985) The Use of Worked Examples as a Substitute for Problem Solving in Learning Algebra. Cognition and Instruction, 2(1), 59-89.(対象は中学生にあたる学年の生徒/実験3では解答例で学んだ群のテスト所要が1問43.6秒・ミス0.18回、自力で解いた群は78.1秒・ミス1.64回)onderwijs.felienne.nl
  2. Atkinson, R. K., Derry, S. J., Renkl, A., & Wortham, D. (2000) Learning from Examples: Instructional Principles from the Worked Examples Research. Review of Educational Research, 70(2), 181-214.(解答例は技能習得の初期に有効/例題と練習問題を対にして交互に配すると効果が高い)assess.ucr.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。