間違えた問題ほど記憶に残る——自信をもって答えて、正解で直す
Learning / Research Digest

間違えた問題ほど記憶に残る——自信をもって答えて、正解で直す

過去問やドリルで間違えるのが怖い。でも自信をもって間違えた問題ほど、正解を知ったあとによく直ると報告されています。間違いを学びの燃料に変える、テスト形式の練習の手順をまとめました。

過去問を解いていて、間違えるのが少し怖い。自信のある問題ほど、答えを書く手が止まる。

外すのは恥ずかしい。だからつい、解答を先に見て「なるほど」で済ませてしまう。

でも、記憶に残りやすいのは逆かもしれません。自信をもって答えて外し、正解で直す。この回り道こそが効いてきます。

自信をもって間違えた問題ほど、あとで直る

「間違い=ムダ」ではありません。強く思い込んで外した間違いほど、正解を知ったあとによく直る。これを心理学で hypercorrection(ハイパーコレクション)と呼びます。

バターフィールドとメトカーフが2001年に報告しました。実験室で参加者に一般教養の問題を解かせ、答えごとに、その答えへの自信の度合いもつけてもらいます。

そのあと正解を見せ、少し時間をおいて同じ問題をもう一度解かせました。すると、自信をもって間違えた問題ほど、次はよく正解できたと報告されています。

同じ間違いを、答えたときの自信で左右に並べた模式図。左は「自信なく間違えた」で、正解を見ても『あ、やっぱり』と驚きがなく、次に解いたとき直った割合をあらわす横棒は短い。右は「自信をもって間違えた」で、正解を見て『え、そうなの!?』と意外に感じて注意が向き、次に解いたとき直った割合をあらわす横棒は長い。実験室で一般教養の問題を使った研究にもとづく傾向の図で、数値の目盛りはつけていないと注記されている
図1: 自信をもって外した間違いほど、正解のあとに直りやすい(当サイト作成)

見てのとおり、分かれ目は「間違えたときの自信」です。強く思い込んでいたほうが、あとで直りやすいのです。

なぜ「間違い」が記憶を強くするのか

自信があった分、正解が「え、そうなの?」と意外に感じられる。この驚きに注意が向き、記憶に強く残る、という説明があります。

ファツィオとマーシュは2009年、2つの実験でこれを確かめました。予想と違うフィードバックほど、その見た目も中身もよく覚えていたと報告しています。

メトカーフは2017年の総説で、間違えたあとに正解のフィードバックを受ける学び方は学習の助けになる、とまとめています。間違いを避けるより、活かすほうへ発想を変える話です。

ただし、注意も要ります。これらは実験室で一般教養の問題を使った研究が中心で、いつでも同じだけ効くわけではありません。

年齢による差も報告されています。ある研究では、若い世代ではっきり出た効きめが、高齢の世代では弱まりました。効き方には個人差があると受け取るのが妥当です。

資格試験でも受験でも、答えを書き切ってから丸をつける

やることは1つ。答え合わせの前に、自分の答えを必ず出し切ることです。

資格試験の勉強なら、テキストを読み返すより、まず過去問を1問解く。うろ覚えでも「これだ」と決めて書いてから、解答を開きます。

受験生なら、暗記カードの裏を先に見ない。表を見て自分で答えてから、裏で確かめる。

社会人の学び直しでも同じです。研修資料を眺める前に、章の問いに自分なりの答えを書く。それから本文と照らします。

外すのが怖くて答えをぼかすと、この効きめは弱まります。当てにいって、堂々と外すほうが得です。

今日から試す「先に答えて、外して、直す」

道具はいりません。いつもの教材で、順番を変えるだけです。

  1. 答えを見る前に、まず自分の答えを書き切る(1問30秒〜)
  2. 「たぶん」で濁さず、今わかる範囲で自信をもって答える
  3. 答え合わせで、外した問題ほど正解とその理由をその場で確かめる
  4. 数日おいて、同じ問題を白紙からもう一度解き直す

コツは、間違いを消しゴムで消さないこと。どう外したかが、直すときの手がかりになります。

答えを見る前に自分で答えを作る発想は、答えを隠して自分で作る学び方とも重なります。習う前にわざと当てにいくなら、答えを習う前に当ててみる学び方も参考になります。

外した問題を数日後に白紙から解き直す部分は、本を閉じて思い出す勉強法が効いてきます。学び方そのものを育てる話は、学びの柱でもまとめています。

まずは今日の1問を、答えを見る前に自分で答えてから丸をつける。外れたら、それが今いちばん伸びる問題です。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 過去問やドリルは、答えを見る前にまず自分の答えを書き切る
  2. 「たぶん」で濁さず、今わかる範囲で自信をもって答える
  3. 答え合わせでは、外した問題ほど正解とその理由をその場で確かめる
  4. 数日おいて、同じ問題を白紙からもう一度解き直す

出典・参考

  1. Metcalfe, J. (2017) Learning from Errors. Annual Review of Psychology, 68, 465-489.columbia.edu
  2. Butterfield, B., & Metcalfe, J. (2001) Errors committed with high confidence are hypercorrected. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 27(6), 1491-1494.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Fazio, L. K., & Marsh, E. J. (2009) Surprising feedback improves later memory. Psychonomic Bulletin & Review, 16(1), 88-92.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  4. Eich, T. S., Stern, Y., & Metcalfe, J. (2013) The hypercorrection effect in younger and older adults. Aging, Neuropsychology, and Cognition, 20(5), 511-521.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。