冷水シャワーを30秒——病気は減らないのに欠勤が減った研究
Health / Research Digest

冷水シャワーを30秒——病気は減らないのに欠勤が減った研究

シャワーの最後の30秒を冷水にする。3千人規模の研究では、続けた人の病欠が29%減っていました。ただし病気そのものは減らず、多くの人が挙げたのは「元気が出る」実感。仕組みと限界、今日からの手順をまとめました。

朝、シャワーを浴びても頭がぼんやりしたまま。だるさを抱えたまま、コーヒーで無理やり起こす。

「冷たいシャワーが体にいい」とは聞くけれど、正直、根性論に見える。

でも、3千人規模で実際に確かめた研究があります。結果は、少し意外なものでした。

3千人を4つに分けて、30日間ためした

2016年、オランダの研究チームが大きな実験をおこないました。掲載誌は PLOS ONE です。

集まったのは18〜65歳の3,018人。くじ引きで4つのグループに分けました(ランダム化比較試験)。

3つのグループは、いつものシャワーの最後を冷水で締める。時間はそれぞれ30秒・60秒・90秒です。残る1つは、これまで通りのグループ(対照群)。

これを30日間、毎日続けてもらいました。

分かったことは、こうです。

  • 冷水を浴びた人たちは、会社を休んだ日数(病欠)が対照群より29%少なかった(意味のある差)
  • ただし「実際に病気だった日数」は、グループ間で差がなかった
  • 30秒・60秒・90秒で、効果に差はなかった

下の図が、この2つの数字の違いです。

冷水シャワー群と対照群を2つの指標で比べた棒グラフ。左の「実際に病気だった日数」は両群の棒がほぼ同じ高さで差がない。右の「会社を休んだ日数」は冷水群の棒が対照群より約29%低い。病気のかかりやすさは変わらず、休んだ日数だけが減ったことを示す模式図
図1: 病気は同じくらい。それでも、休む日は減っていた(当サイト作成・仕組みを模式化)

見てのとおり、病気になった日数はほぼ同じ。減ったのは「休んだ日数」のほうでした。

「病気が減った」のではなく「休まず動けた」

ここが、この研究のいちばん面白いところです。

冷水を浴びた人は、病気になりにくくなったわけではありません。かかった日数は変わっていない。

それでも、休む日は減った。参加者が最も多く挙げた感想は「活力が増した」でした。カフェインを飲んだときのようだ、という声もあったそうです。

つまり効いたのは、体が丈夫になったことより、朝に感じる「動ける感じ」かもしれません。多少だるくても動き出せた、という変化です。

しかも64%の人は、実験が終わったあとも自分から冷水シャワーを続けていました。

ここは慎重に読んでください

心強い話ですが、鵜呑みにはできない理由があります。

まず、この研究の結果はすべて自己申告です。冷水を浴びているかは本人にわかるので、「効いているはず」という期待が数字を押し上げた可能性があります。参加者も、健康で意欲的な人にかたよっていました。

冷水そのものの効果も、まだ決着していません。104件の研究を見わたした2022年のレビューは、体にいくつかの変化は起きるものの、確かな結論にはさらなる研究が必要で、議論は続くと結んでいます。

効き方には個人差があります。誰にでも同じように効くとは限りません。

そして、冷たい水は体への負担にもなります。心臓や血圧に持病がある人、冷えに弱い人は、始める前に医師へ相談してください。だるさや気分の落ち込みが続くときは、シャワーだけで解決しようとせず、医療機関に相談を。

今日から試す、いちばん軽いやり方

やることは、いつものシャワーに30秒足すだけです。

  1. シャワーの最後に、水温を下げて30秒。いきなり全部を冷水にしない
  2. 冷水は30秒で十分。研究では長くしても効果は変わらなかった
  3. 息を止めず、ゆっくり呼吸しながら浴びる
  4. 週の大半、毎日くり返す。続けられる範囲で無理なく

コツは、頑張りすぎないことです。90秒耐えても30秒と同じなら、短いほうが続きます。

続いた人だけが変化を感じられた、という順番でした。まずは明日の朝、最後の30秒だけ試してみてください。

朝のだるさ対策は、朝の光で体内時計を整える数分の運動で気分を上げるでも扱っています。体をいたわる小さな習慣は、健康の柱にまとめました。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. シャワーの最後に水温を下げて30秒。いきなり全部を冷水にしない
  2. 冷水は30秒で十分。長くしても効果は変わらなかった
  3. 息を止めず、ゆっくり呼吸しながら浴びる
  4. 心臓・血圧に不安があれば、始める前に医師へ相談する
  5. だるさや不調が続くなら、シャワーだけで解決しようとしない

出典・参考

  1. Buijze GA, et al. (2016) The Effect of Cold Showering on Health and Work: A Randomized Controlled Trial. PLoS One, 11(9): e0161749.(18〜65歳3,018人のランダム化比較試験。30日間シャワーの最後を冷水で締めた群は、病欠日数が対照群より29%少なかった〈IRR 0.71・P=0.003〉。一方で実際に病気だった日数には差がなく、30/60/90秒で効果の差もなかった。最も多い感想は「活力が増した」。結果は自己申告で盲検化できない点を著者が限界として明記)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Espeland D, de Weerd L, Mercer JB (2022) Health effects of voluntary exposure to cold water – a continuing subject of debate. International Journal of Circumpolar Health, 81(1): 2111789.(冷水曝露の健康影響に関する104件の研究を精査したレビュー。いくつかの生理的な変化は見られるが、少人数・条件のばらつきなどから、確かな結論にはさらなる研究が必要で議論は続くと結んでいる)pmc.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。