階段を1回20秒、全力で上る——ジムに行かなくても持久力が上がった
Health / Research Digest

階段を1回20秒、全力で上る——ジムに行かなくても持久力が上がった

運動したほうがいいのは分かっている。でも、ジムに通う時間もまとまった枠も作れない。ある実験では、1回20秒の全力の階段上りを週3日・6週間続けた女性31人で、心肺体力の数値が上がったと報告されています。特別な道具のいらない、数十秒の階段の使い方を、限界も添えてまとめました。

「健康のために運動を」とよく言われる。でも、ジムに通う時間も、走りに出る30分も、平日には作れない。

エレベーターの前で「階段にしようかな」と一瞬思う。でも、疲れそうだからボタンを押す。

そんな毎日ではないでしょうか。

実は、体力を上げるのに、まとまった運動の時間はいらないかもしれません。

鍵になるのは、長さよりも「短くて強い」動き。数十秒の階段を調べた実験があります。

20秒の全力階段で、心肺体力の数字が上がった

手がかりは、カナダのマクマスター大学のアリソンらが2017年に発表した研究です。掲載誌は Medicine & Science in Sports & Exercise でした。

参加者は、ふだん運動していない女性31人。平均24歳です。

やってもらったのは、こんな運動でした。

  • 階段を20秒、全力で駆け上がる
  • 短い休みをはさんで、これを3本
  • 週に3日、6週間続ける

1回の運動で階段を上るのは、合計でも60秒(20秒×3本)です。

6週間後、心肺体力の指標(最大酸素摂取量・VO₂peak)を測りました。

すると、この指標は約12%上がっていました(8.27→9.25 METs、P=0.002)。別のやり方(1階分を60秒で上り下り×3本)でも、約7%上がっています。

VO₂peak は、体がどれだけ酸素を取り込んで動き続けられるかの目安です。ざっくり言えば「持久力(スタミナ)」の物差しだと思ってください。

下の図が、上る前と6週間後の変化です。

心肺体力の指標VO2peakを6週間の前後で比べた棒グラフ。1回20秒の全力の階段上りを3本、週3日・6週間続けた前後で、指標が8.27METsから9.25METsへ約12パーセント上がったことを示す。座りがちな女性31人の実験で、指標の変化にとどまる
図1: 上ったのは合計60秒。それでも6週間で心肺体力の数字は動いた(当サイト作成)

見てのとおり、上ったのは1回あたり合計60秒。それでも、6週間で数字は動きました。

ただし、これは限られた条件の話です。参加者は31人で、全員が女性、しかも「ふだん運動していない人」でした。期間も6週間と短めです。だれにでも同じだけ現れるとは限りません。

休憩のたびに、少しずつでも効く

もう1つ、続けやすさのヒントになる研究があります。

同じマクマスター大学のジェンキンスらが2019年に、こんどは「1日に分けて」上る形を試しました。掲載誌は Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism です。

座りがちな若い成人を、階段を上るグループと、何もしないグループに分けました(各12人)。

上るグループは、3階分の階段(60段)を勢いよく上ります。これを1日3回、1〜4時間あけて、週3日・6週間くり返しました。

研究者はこれを「運動のおやつ(exercise snacks)」と呼んでいます。まとめて食べず、少しずつつまむイメージです。

6週間後、上ったグループの心肺体力の指標は、何もしなかったグループより高くなっていました(P=0.003)。

ただし研究者は、その上がり幅は小さかった、とはっきり書いています。劇的に変わるという話ではありません。

この形は、日本のオフィスや通勤にそのまま重なります。

  • コーヒーを入れに行くとき、エレベーターをやめて階段で戻る
  • トイレは1つ上のフロアを使い、階段で上る
  • 駅やマンションで、エスカレーターの横の階段を選ぶ

まとめて時間を取らなくても、1日の中に3回だけ階段を差しこむ。それなら、忙しい日でも動かせます。

今日から試す「数十秒の階段」

やることは1つ。エレベーターやエスカレーターを、階段に置きかえるだけです。

  1. まず1回、3階分だけを目標にする。上るときは、少し息が弾む速さで
  2. 慣れるまでは手すりを使い、20〜60秒を目安にゆっくり増やす
  3. コーヒー休憩やトイレのついでに、1日2〜3回に分ける
  4. 週3日から始める。上れた日はカレンダーに印をつけると続けやすい
  5. 下りは急がない。段を踏み外さないことを優先する

覚えておこうとすると、忙しい日ほど忘れます。だから「この休憩は階段」と、場面にひも付けてください。

研究で差が出たのは、ゆっくりの上りではなく、息が上がるくらいの強さでした。とはいえ、いきなり全力は禁物です。まずは「少しきつい」と感じる手前から始めてください。

体を小さく動かす工夫は、座りっぱなしを2分で区切る1日の歩数の増やし方でも扱っています。あわせて健康の柱ものぞいてみてください。

うまくいかないとき・向いていない場面

一番のつまずきは、はりきって毎日やろうとすることです。

研究でも、上ったのは週3日でした。毎日のノルマにすると、階段を見るのが憂うつになります。回数より、細く長く続けるほうが大事です。

次の人は、この記事をそのまま当てはめないでください。

  • 心臓や血圧に持病がある人。急に強く上ると負担がかかります
  • 膝や腰に痛みがある人。特に下りは負担が大きいので無理をしない
  • 高齢の人や、ふだんほとんど動いていない人。転倒の危険があります

当てはまる人、体調に不安がある人は、始める前に主治医へ相談してください。

そして、これは心肺体力の「指標」が上がったという報告です。体重が落ちる、病気を防ぐ、といった約束ではありません。効き方には個人差もあります。

気分が沈みがちなときは、短い運動と気分の関係もあわせてどうぞ。

まとまった運動の時間は、今日は取れなくていい。

次にエレベーターの前に立ったら、1回だけ、横の階段を選んでみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. エレベーターやエスカレーターをやめ、3階分だけ階段を上ると決める
  2. 上るときは少し息が弾むくらいの速さで。1回20〜60秒でよい
  3. コーヒー休憩やトイレのついでに、1日2〜3回に分けて上る
  4. 週3日を目安に。慣れるまで手すりを使い、無理はしない
  5. 膝・腰・心臓に不安がある人や高齢の人は、始める前に主治医へ相談する

出典・参考

  1. Allison, M. K., Baglole, J. H., Martin, B. J., MacInnis, M. J., Gurd, B. J., & Gibala, M. J. (2017) Brief Intense Stair Climbing Improves Cardiorespiratory Fitness. Medicine & Science in Sports & Exercise, 49(2), 298-307.(ふだん運動していない女性31人。1回20秒の全力の階段上りを3本、週3日・6週間続けた前後で、心肺体力の指標VO2peakが約12%上がったと報告)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Jenkins, E. M., Nairn, L. N., Skelly, L. E., Little, J. P., & Gibala, M. J. (2019) Do stair climbing exercise 'snacks' improve cardiorespiratory fitness? Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism, 44(6), 681-684.(座りがちな若い成人24人の無作為化比較試験。3階分の階段を1日3回・週3日・6週間上ると、何もしない群より心肺体力の指標が高くなったが、上がり幅は小さかったと明記)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。