「まだやる気が出ない」も段階のひとつ——変化の5ステップで次の一手を選ぶ
Habits / Research Digest

「まだやる気が出ない」も段階のひとつ——変化の5ステップで次の一手を選ぶ

「やる気が出たら始めよう」で毎回止まる。行動を変える研究は、人が準備の度合いで5つの段階を進むと示します。いまの自分がどの段階かを見分け、その段に合った一手だけを選ぶ地図をまとめました。

「やる気が出たら始めよう」。そう思ったまま、何週間も動けていない。

駅をひとつ手前で降りて歩く。休みの日にウォーキング。資格の参考書を開く。

やった方がいいのは分かっているのに、体が動かない。

これを「意志が弱いから」と片づける前に、知ってほしい見方があります。

行動には「準備の段階」があり、段階ごとに効く一手はちがう、という考え方です。

研究が示すこと

プロチャスカらは、人がどう自分の行動を変えるかを12年かけて調べました。

1992年、心理学の学術誌『American Psychologist』(第47巻1102〜1114ページ)にまとめられています。

喫煙などをやめた人が、専門家の助けの有無にかかわらずどう変わるかを追った研究です。

分かったのは、人は5つの段階を順に進む、ということでした。

  • 無関心期: 変える気が、まだない
  • 関心期: 気にはなるが、まだ踏み出さない
  • 準備期: 近いうちにやろうと、動き始めている
  • 実行期: 実際に行動を変えている(数日〜半年)
  • 維持期: その状態を保ち、逆戻りを防いでいる

論文は「関心期」をこう定義しています。

Contemplation is the stage in which people are aware that a problem exists and are seriously thinking about overcoming it but have not yet made a commitment to take action.

(問題があると気づき、真剣に乗り越えようと考えてはいるが、まだ行動する決心はしていない段階)

面白いのは、この段階に長くとどまる人が多いことです。

ある調査では、関心期にいた喫煙者200人を2年間追いました。多くの人は、2年たっても関心期のまま、大きな行動には移りませんでした。

つまり「気になっているのに動けない」のは、あなただけの問題ではありません。名前のついた、ありふれた段階です。

限界も正直に書きます。この研究はもともと、喫煙や飲酒などの行動を対象に組み立てられました。

段階の見分け方や「段階に合わせた働きかけ」がどこまで効くかは、研究者のあいだでも議論があります。

だから本記事は、断定ではなく「自分の状態を見立てる地図」として読んでください。

下の図が、その5段階です。左から右へ、段は上がっていきます。

無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期の5本の棒が左から右へ階段状に高くなる図。下の矢印が『準備が進むほど段が上がる』ことを示し、実行期から関心期へ戻る曲線の矢印が『つまずいても途中の段までしか下がらない』ことを示している
図1: 変化の5段階。つまずいても、多くは途中の段までしか下がらない(当サイト作成)

見てのとおり、つまずいても、多くは振り出しまでは戻りません。

自分がどの段階かを見分ける

まず、変えたい行動を1つだけ選びます。運動、勉強、片づけ、節約——なんでもかまいません。

ここでは「駅をひとつ手前で降りて歩く」を例に、いまの自分に近いのはどれかを見てみます。

  • 「歩かなくても困っていない」と感じる → 無関心期
  • 「歩いた方がいいとは思う。でも、まだ」→ 関心期
  • 「月曜から始めよう、と日を決めかけている」→ 準備期
  • 「今週すでに二、三回は歩いた」→ 実行期
  • 「半年続いていて、雨の日の代わりも決めてある」→ 維持期

多くの「習慣のコツ」は、実行期の人に向けて書かれています。

カレンダーに入れる、記録する、if-thenで決める。どれも「もうやる気はある人」の道具です。

だから、まだ関心期にいる人がそれを試すと、うまくはまりません。

道具のせいでも、あなたのせいでもなく、段階がずれているだけです。

段階に合った一手を選ぶ

段階ごとに、次の一手を変えます。狙うのは、ひとつ上の段へ上がることだけです。

  1. 無関心期 → 情報を1つだけ見る。「歩くと何が変わるか」を軽く知る。計画はまだ立てない
  2. 関心期 → やる理由とやらない理由を紙に書き出す。天秤を自分の目に見えるようにする(WOOP・メンタルコントラスティングが近い)
  3. 準備期 → 開始日と、最初の小さな一歩を1つ決める。「木曜は一駅歩く」だけでいい(小さく始める)
  4. 実行期 → 合図と行動を固定する。「会社を出たら一駅歩く」のようにif-thenプランニングで決める
  5. 維持期 → つまずいた日の戻り方を、先に決めておく。「雨なら家で5分ストレッチ」など(1日抜けても立て直す)

ポイントは、いきなり実行期の道具に飛ばないことです。

いま立っている段から、ひとつ上へ。それだけを狙います。

つまずくのは、失敗ではなく普通のこと

もうひとつ、研究が示した大事な事実があります。

一度で維持まで届く人は、むしろ少数派でした。喫煙をやめた人は、平均で3〜4回の行動をへて、ようやく長続きの段階に入っていました。

そして、つまずいた人の多くは、振り出しには戻りません。

同じ論文では、行動が崩れた喫煙者の約85%が、無関心期ではなく関心期か準備期に戻っていました。

らせん階段を思い浮かべてください。ひと回りして同じ向きに来ても、位置は前より少し上です。

だから、残業続きで数日サボっても「関心期か準備期からやり直す」でいい。ゼロに戻ったわけではありません。

この立て直し方は自分を責めない習慣術にもつながります。

今日の一歩

やることは、1つだけです。

変えたい行動を1つ選び、いまの自分がどの段階かを見立ててください。

そして、その段のひとつ上へ上がる一手だけを選ぶ。実行期の道具は、実行期に来てから使えばいい。

運動でも、資格の勉強でも、家計の見直しでも、やり方は同じです。

段階に名前がつくと、「動けない自分」ではなく「いまはこの段にいる自分」として見えてきます。

次の一段は、そこから決まります。続け方そのものは習慣化の歩き方にまとめています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 変えたい行動を1つ選び、いまの自分がどの段階か(無関心・関心・準備・実行・維持)を見立てる
  2. 関心期なら、やる理由・やらない理由を紙に書き出す(まだ実行計画は立てない)
  3. 準備期なら、開始日と最初の小さな一歩を1つだけ決める
  4. 実行・維持期なら、合図と行動を固定し、つまずいた日の戻り方を先に決める
  5. つまずいても振り出しには戻らない。関心期か準備期から上りなおす

出典・参考

  1. Prochaska, J. O., DiClemente, C. C., & Norcross, J. C. (1992) In Search of How People Change: Applications to Addictive Behaviors. American Psychologist, 47(9), 1102-1114.avannistelrooij.nl
  2. Raihan, N., & Cogburn, M. (2023) Stages of Change Theory. StatPearls, StatPearls Publishing / NCBI Bookshelf.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。