やめたい癖は我慢より『置き換え』——同じきっかけに別の動作を割り当てる
Habits / 実践チェックリスト

やめたい癖は我慢より『置き換え』——同じきっかけに別の動作を割り当てる

「今度こそやめる」と我慢するほど、爪かみや貧乏ゆすりが戻ってくる。癖を消そうとするのではなく、同じきっかけに『両立しない別の動作』を割り当てる置き換えのやり方を、日常の場面でまとめました。

会議中、気づけばまた貧乏ゆすり。「やめよう」と足を止めても、数分後にはもう揺れている。

爪かみも、口さみしさも同じです。我慢して力むほど、かえって元に戻ってしまう。

じつは癖は、「消す」より「別の動作に置き換える」ほうが戻りにくい。そのやり方をまとめました。

なぜ「我慢」だけだと戻るのか

癖は「きっかけ → 動作 → 満たされ方」でひとつながりになっています。退屈や緊張(きっかけ)で、爪をかむ(動作)、すると気がまぎれる(満たされ方)。

我慢は、この真ん中の動作を「空ける」だけです。きっかけも、満たされたい気持ちも残ったまま。だから行き場を失った衝動が、また同じ動作を呼び戻します。

行動療法に、逆の発想の古い方法があります。ハビットリバーサル(habit reversal)です。動作を空けるのではなく、同じきっかけに「両立しない別の動作」を割り当てる。この別の動作を competing response(競合反応)と呼びます。

原型を作ったのはアズリンとナンの1973年の報告です。爪かみ・指しゃぶり・チックなどの癖を持つ12人に、この方法を1回の面談で教えたところ、多くで癖が大きく減ったとされています。ただし少人数の症例報告で、比べる対照群はありません。ここは差し引いて読んでください。

その後の研究をまとめたのがベイトらの2011年のメタ分析です。18の研究・575人を統合し、何もしない条件と比べた効果量は d=0.80 と、大きめでした。対象は爪かみ・指しゃぶり・チック・吃音などです。

下の図が、「置き換え」の考え方です。

退屈や緊張などのきっかけから、つい出る癖(爪をかむ・貧乏ゆすり)へ向かう流れと、同じきっかけから両立しない別の動作(手を握る・指を組む)へ置き換える流れを左右に並べ、どちらも『手が動いて気がまぎれる』という同じ満たされ方につながることを示した図。変えるのは真ん中の動作だけ
図1: きっかけと満たされ方はそのまま、真ん中の動作だけを入れ替える(当サイト作成)

見てのとおり、両端はそのまま。手を入れるのは、真ん中の動作だけです。

このチェックリストの使い方

大事なのは、全部を一度にやらないことです。

まず、自分が一番出やすい癖を1つだけ選んでください。順番は「①出そうな瞬間に気づく → ②別の動作に置き換える」。気づけないと、置き換えるタイミングもつかめません。

1つの癖で数日ようすを見て、手ごたえが出てから次へ進む。習慣を仕組みに変える考え方は習慣化の歩き方でも扱っています。

まず「出そうな瞬間」に気づく

置き換えの前に、癖が出る瞬間を自分でつかみます。

どんな時に出やすいか、数日メモしてみてください。会議中、スマホを見る時、考えごとをしている時。人によって場面が決まっています。

コツは、手が口へ近づく「直前のムズムズ」に気づくことです。動作に入ってからでは遅い。ムズムズの段階で気づけると、次の一手が打てます。きっかけを先読みして手を打つ発想は、「もし〜したら」で行動を決めておくとも重なります。

同じきっかけに「両立しない動作」を割り当てる

置き換える動作は、癖と同時にはできないものを選びます。ここが肝心です。

手の癖(爪かみ・髪いじり)には、両手を軽く握るか、指を組む。にぎっている間は、かむこともいじることもできません。かむ衝動が引くまで、そのまま保ちます。

足の癖(貧乏ゆすり)には、かかとを床に押しつけて力を込める。押しつける動きは、揺らす動きと両立しません。

口さみしさには、水を一口飲むか、ガムを1つかむ。あらかじめ「口が寂しくなったらこれ」と決めておくと、迷わず切り替えられます。

選ぶ目安は、目立たず、しばらく続けられる動作であることです。周りから見て自然で、衝動が引くまで保てるものがいいでしょう。

うまくいったら、自分で認める

置き換えは、一度で身につくものではありません。癖が出かけるたびに割り当てた動作を繰り返して、少しずつ上書きしていきます。

「今スルーできた」と気づいたら、その場で自分を認めてください。小さな成功を見のがさないことが、続ける力になります。うまくいったことを身近な人に話して応援してもらうのも、元の方法にもともと含まれている要素です。

向いていない場合・注意

置き換えても変わらない時は、たいてい「気づく」が抜けています。動作に入ってからでは間に合いません。ムズムズの段階まで、気づく練習を戻してください。

ここで一つ注意があります。今回の研究は、主にチックや抜毛など、医療の対象になる症状を扱ったものです。日常の軽い癖そのものを測った実験ではありません。効き方には個人差があり、どんな癖も必ず消えるわけではありません。

皮膚を傷つける、髪を抜いてしまう、日常生活に支障が出る。そんなつらさが強い時は、自己流で抱え込まないでください。専門家や医療機関に相談する選択を、いつでも持っておくことが大切です。

やり方はもう一つあります。きっかけになる物を遠ざけて、癖の始まりに手間を足す摩擦で断つ環境設計です。あちらは環境を変える方法、今回は動作を入れ替える方法。片方で足りなければ、両方を重ねてください。

まずは一番出やすい癖を1つ、そこに置き換える動作を、今日のうちに決めておく。それだけで、次に出そうになった時の一手が変わります。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 爪をかみたくなったら、両手を軽く握って衝動が引くまで保つ
  2. 貧乏ゆすりが出たら、かかとを床に押しつけて力を込める
  3. 口さみしくなったら、水を一口飲む・ガムをかむと先に決めておく
  4. 髪や顔を触る手には、ペンや小物を握らせて指をふさぐ
  5. 「えーと」が口をつく前に、一拍おいて静かに息を吸う

出典・参考

  1. Bate, K. S., Malouff, J. M., Thorsteinsson, E. T., & Bhullar, N. (2011) The efficacy of habit reversal therapy for tics, habit disorders, and stuttering: A meta-analytic review. Clinical Psychology Review, 31(5), 865-871.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Azrin, N. H., & Nunn, R. G. (1973) Habit-reversal: A method of eliminating nervous habits and tics. Behaviour Research and Therapy, 11(4), 619-628.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。