メールは1日3回だけ開く——チェックを減らすとストレスが下がった実験
Focus / Research Digest

メールは1日3回だけ開く——チェックを減らすとストレスが下がった実験

メールを来るたびに開くと集中は細切れになり、返すまでの間もずっと気になります。社会人124人の実験では、チェックを1日3回に絞った週のほうがストレスが低く、気を散らされる感覚も弱いという結果でした。通知の切り方と時間帯の決め方を、今日から試せる形でまとめました。

「1通くらい」と開いたメールで、気づけば10分。返信を打ち、ついでに別のタブを見て、さっきまで何をしていたか思い出せない。

メールは、来るたびに集中を細かく削ります。やっかいなのは、開いていない時間まで奪うことです。「まだ来ていないかな」と気になって、頭の片隅が休まりません。

そのモヤモヤ、開く回数を先に決めるだけで軽くできるかもしれません。

「1日3回まで」でストレスが下がった実験

カナダの研究者クシュレフとダンが、社会人124人を対象に調べました(2015年)。学生から専門職まで、職業はさまざまです。

一人ひとりが2週間かけて、2つの過ごし方を両方試す形です。ある1週間は「メールは1日3回まで」に制限し、もう1週間は「好きなだけ開いてよい」。同じ人が両方を体験するので、比べやすい設計です。

結果は、1日3回に絞った週のほうが、日々のストレスが低くなりました。メールに気を散らされる感覚も弱まっています。

そしてストレスが低い週ほど、心の充実度など幅広い面で良好でした。

回数を減らしても、開く一回一回のメールが変わったわけではありません。変わったのは「いつ開くか」の枠だけです。

近い手ざわりを、別のチームが別のやり方で確かめています。マークらは社会人40人の職場を12日間追い、日々の気分を尋ねるだけでなく、体につけたセンサーでストレスも測りました(2016年)。すると、1日のうちメールに向かう時間が長い人ほど、測ったストレスも高い、という関係が見えました。

作者もサンプルも違う2本が、同じ方向を指しています。メールに引っぱられる働き方は、気分だけでなく体の反応にもストレスとして出る、ということです。割り込みそのものがストレスを押し上げる話は、割り込みで作業は速くなる——でもストレスは上がったでくわしく見ています。

ただし、クシュレフとダンの研究は志願者124人・各1週間の実験です。しかも多くの人が「1日3回だけにするのは難しかった」と答えています。だれにでも同じ効果を約束する話ではなく、「開く回数を絞るとストレスが下がることがある」という手がかりとして受け取ってください。

減るのは「開く時間」より「気になる時間」

一日の仕事の流れを思い浮かべてください。

一日の仕事時間を横長の帯で表した図。上の帯は通知が来るたびにメールを開くやり方で、オレンジの縦線が十本以上入り、集中できる緑の時間が細切れに分断されている。下の帯は1日3回だけ開くやり方で、オレンジの縦線は朝・昼・夕の3本だけになり、緑のまとまった集中時間が長く続いている様子を示した図
図1: 開く回数を絞るほど、集中の途切れも「気になる時間」も減る(当サイト作成)

図の上は、通知が来るたびに開くやり方です。集中の帯が何度も分断されています。下は1日3回にまとめたやり方で、緑のまとまりが長く続きます。

見てのとおり、変わるのは「開く回数」だけです。それだけで、集中が途切れる回数と、開いていない間の落ち着かなさが減っていきます。

ここで切り分けたいのは、「開いて読む時間」と「気になる時間」です。一通を読む手間は、朝に読んでも昼に読んでも変わりません。軽くなるのは、その合間にずっと頭の片隅を占めていた”待ち”のほう——開いていないのに気を取られている時間です。

だから効くのは、「3回にまとめる」という形そのものではありません。さきほどのマークらの研究でも、ただ束ねるだけでストレスが下がる、という証拠までは出ませんでした。効くのは、メールに費やす時間の総量と、「いつでも入ってくる」構えを薄くすること。言いかえれば、“気になる時間”のほうを削ることです。

会社勤めでも、在宅の作業でも同じです。返信を速くしようと開きっぱなしにするほど、一つのことに向かう時間は短く刻まれます。

今日から試す3ステップ

いちばん効くのは、開く「回数」より、開かない「間」をつくることです。次の3つを、明日の午前から試してみてください。

  1. 通知を切る。 メールアプリの音・バッジ・ポップアップをオフにします。まずはこれだけで、「来たから開く」の連鎖が止まります。所要3分の設定です。アプリごとに消すのが面倒なら、スマホやPCの集中モードでまとめて止める手もあります(やり方は通知を『集中モード』で束ねるに)。
  2. 開く時間を決める。 朝・昼すぎ・夕方など、1日3回ほどの枠を決めます。その時間になったら開き、終わったらタブごと閉じる。カレンダーに10〜15分の枠として入れると守りやすくなります。
  3. 開いたらまとめて片づける。 一通ずつ後回しにせず、その場で「読む・返す・消す」を一気に処理します。細切れに見に行く回数が、これで大きく減ります。メール以外の通知も同じ考え方でまとめられます(通知バッチ処理の手順)。

急ぎの連絡が心配なら、「本当に急ぐ用は電話かチャットに」と周囲へ一言伝えておくと安心です。多くの用件は、数時間以内の返信で十分に間に合います。

うまくいかない時・向かない場合

仕事の性質上、メールを閉じておけない人もいます。顧客対応や当番制のサポートなど、即応が求められる役割では、3回に絞るのは現実的ではありません。

その場合は回数を無理に減らさず、「見たらその場でまとめて片づける」だけ先に取り入れてください。開いて閉じてを繰り返さないだけでも、途切れは減ります。

実験の参加者でさえ、3回を守るのは難しかったと答えています。守れない自分を責める必要はありません。まずは午前中の1回を、通知オフで試すところからで十分です。

まとめ

メールの疲れは、通数そのものより「いつでも入ってくる」構えから来ます。

開く時間を自分で決めた週に、ストレスが下がり、気を散らされる感覚もやわらいだ——それが124人の実験が見せてくれた手がかりでした。

次に手がメールへ伸びたら、一度そのタブを閉じてみてください。次に開く時間だけ決めておけば、集中は戻ってきます。

集中を守るほかの工夫は、集中のまとめにもそろえています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. メールの通知(音・バッジ・ポップアップ)をオフにする
  2. 開く時間帯を朝・昼・夕の3回に決め、それ以外は閉じておく
  3. 開いたら「読む・返す・消す」をその場でまとめて片づける
  4. 急ぎの用は電話やチャットに任せると周囲へ一言伝えておく
  5. 3回が難しい日は、回数より『まとめて開く』から始める

出典・参考

  1. Kushlev, K., & Dunn, E. W. (2015) Checking email less frequently reduces stress. Computers in Human Behavior, 43, 220-228.sciencedirect.com
  2. Kushlev, K., & Dunn, E. W. (2015) Checking email less frequently reduces stress(著者版フルテキストPDF). Computers in Human Behavior, 43, 220-228.interruptions.net
  3. Mark, G., Iqbal, S. T., Czerwinski, M., Johns, P., & Sano, A. (2016) Email Duration, Batching and Self-interruption: Patterns of Email Use on Productivity and Stress. Proceedings of the 2016 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, 1717-1728.microsoft.com

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。