何度読んでも覚えられない——読みながら「なぜ?」と問うと記憶に残る
Learning / Research Digest

何度読んでも覚えられない——読みながら「なぜ?」と問うと記憶に残る

資格の勉強でテキストを何度読み返しても、いざ問題を解くと言葉が出てこない。足りないのは読む回数ではなく、一言の問いかけでした。読みながら「なぜ?」と自分に問うだけで残り方が変わる勉強法を、今日試せる手順にまとめました。

資格の勉強で、テキストを何度も読み返す。ページの見た目はもう頭に入っているのに、いざ問題を解くと言葉が出てこない。

読んだ回数は足りているはずなのに、なぜ残らないのか。

足りないのは読む回数ではなく、たった一言の問いかけかもしれません。

読みながら「なぜ?」と問うだけで残り方が変わる

教育心理学に、検索練習や分散学習と並べて挙げられる勉強法があります。「なぜそうなるのか」を自分に問う方法です。

やることは単純です。書かれた事実を読んだら、そこで止まって「なぜこれは正しいのだろう」と一度考える。それだけです。

教育心理学者のダンロスキーが2013年にまとめた学習法の解説では、この「なぜ?」の問いかけは「見込みのある方法」として紹介されています。

ある生物学の授業の研究では、「なぜ?」を問う練習をした学生のテストの正答率が76%、ふつうに勉強したグループが69%だった、と教育ガイドで紹介されています。

大きな差ではありません。でも、やることはほとんど増えていない。読むついでに、一言問うだけです。

ここは正直に触れておきます。この方法は、そのテーマをまったく知らない状態では効きにくいと言われています。「なぜ?」に自分なりの答えを出すには、手がかりになる知識が少し要るからです。

左は『ただ読む』で、新しい事実の箱が1つだけ宙に浮いて何ともつながっていない様子。右は『なぜ?と問う』で、真ん中の事実の箱から線が伸び、すでに知っていることや自分の経験の箱に結びついている様子を並べた図
図1: ただ読むと事実は宙に浮く。「なぜ?」が既知の知識につなぐ(当サイト作成)

見てのとおり、違いは事実を「宙に浮かせる」か「すでに知っていることにつなぐ」かだけです。

なぜ一言でそこまで変わるのか

ただ文字を目で追うと、新しい事実はどこにも結びつかず、するりと抜けていきます。

「なぜ?」と問うと、脳は答えを探して、すでに知っていることや自分の経験を引っぱり出します。

新しい事実が、古い知識に引っかかる。この引っかかりが多いほど、あとで思い出す手がかりも増えます。

似た方法に、自分の言葉で説明し直す「自己説明」があります。詳しくは習ったことを自分の言葉で説明するも参考になります。「なぜ?」は、その入り口としていちばん軽く始められます。

今日から試す「なぜ?」の勉強法

道具はいりません。今日のテキストから、そのまま変えられます。

  1. ひと段落読んだら、いったん止まる。「なぜこれは正しいのか」と自分に問う(10〜20秒)
  2. 声に出すか、余白に一言メモする。答えが完璧でなくてよい
  3. うまく答えられない事実に、印をつけておく。そこが、まだ理解していない場所

ポイントは、答えの正しさを気にしすぎないことです。問うこと自体が、記憶の引っかかりを作ります。

答えに詰まったら、それは弱点が見つかったサインです。基礎知識が足りないテーマなら、まず全体をざっと読んで土台を作ってからのほうが効きます。

学び方そのものを見直す発想は、学びの柱でまとめています。覚えたことは、思い出す練習と合わせるとさらに定着します。あわせて思い出す練習も試してみてください。

読み返して安心する時間を、少しだけ「なぜ?」に振り替える。それだけで、同じ勉強時間から頭に残るものが変わってきます。まずは次の1段落を読んだあと、「なぜ?」と一度問うところから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. ひと段落読んだら止まり「なぜこれは正しいのか」と自分に問う(10〜20秒)
  2. 声に出すか余白に一言メモする。答えが完璧でなくてよい
  3. うまく答えられない事実に印をつける。そこがまだ理解していない場所
  4. 詰まったら基礎をざっと読んで土台を作ってからもう一度問う

出典・参考

  1. Dunlosky, J. (2013) Strengthening the Student Toolbox: Study Strategies to Boost Learning. American Educator, 37(3), 12-21.(2013年の学習法レビューの著者による解説)aft.org
  2. University of Wisconsin–La Crosse, Center for Advancing Teaching & Learning. Elaborative Interrogation(Teaching Improvement Guide).uwlax.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。