集中が切れたら40秒だけ緑を見る——席を立てなくてもできる休憩
Focus / Research Digest

集中が切れたら40秒だけ緑を見る——席を立てなくてもできる休憩

午後、画面を見続けて注意が上滑りする。でも席は立てない。150人の実験では、40秒だけ緑の眺めを見た人が、そのあとの作業で見落としが減りました。デスクでできる数十秒の視覚的な休憩を、限界も添えてまとめました。

午後、同じ画面をずっと見続けている。最初は集中できていたのに、だんだん文字が上滑りしてくる。

見落としが増えてきた。でも会議室にこもっているし、席を立って散歩に行くわけにもいかない。

その場を動けないまま、注意だけがすり減っていく。そんな時間はないでしょうか。

実は、席を立たなくても、数十秒あれば注意は少し戻せるかもしれません。

40秒、緑を見た人は見落としが減った

手がかりになるのが、メルボルン大学のリーらが2015年に発表した研究です。掲載誌は Journal of Environmental Psychology でした。

参加者は大学生150人。全員が、画面を使った単調な注意の課題に取り組みました。

課題はこうです。数字が次々と画面に出るあいだ、キーを押し続ける。ただし「3」が出たときだけ押さない。地味で、集中の続きにくい作業です。

参加者は課題の途中で、40秒だけ都市の屋根の風景を見ました。半分の人は花の咲いた緑の屋根を、もう半分の人はむき出しのコンクリートの屋根を見ています。

結果は分かれました。緑を見た人のほうが、そのあとの課題での見落とし(押し忘れ)が少なく、後半の集中が保たれていました。

研究者は、この40秒の緑の眺めを「マイクロ休憩(micro-break)」と呼んでいます。

下の図が、2つのグループの違いです。

40秒の休憩のあとの課題での見落とし(反応のヌケ)を、2つのグループで比べた棒グラフの模式図。左のコンクリートの屋根を見た群は棒が高く見落としが多い。右の花の緑の屋根を見た群は棒が低く見落としが少ない。緑を短く見た側のほうが見落としが少なかったことを示す
図1: 40秒だけ緑を見た群のほうが、見落としが少なかった(当サイト作成・傾向を模式化)

見てのとおり、違いは「席を立ったかどうか」ではありません。40秒、何を見たかです。

ただし、これは150人の大学生が、実験室で画面の写真を見たときの結果です。1回きりの40秒の休憩で、単調な課題を使っています。あなたの複雑な仕事や、実際のオフィスでそのまま同じになるとは限りません。

「デスクで緑を見るだけ」でも効くのか

自然と注意の関係では、もう少し前から知られた研究もあります。

ミシガンのマーク・バーマンらは2008年、自然が注意を回復させるかを2つの実験で調べました。掲載誌は Psychological Science です。

抄録の一節がこうです。

walking in nature or viewing pictures of nature can improve directed-attention abilities

自然の中を歩くことだけでなく、自然の「写真を見る」ことでも、注意の働きが上向いた、という報告です。

だから、緑の効果を受け取るのに、必ずしも外へ出て歩く必要はありません。窓の外の木、机の上の観葉植物、なければ緑の写真でも、視線を数十秒あずける先にはなります。

昼休みに30分ほど緑の中を歩けるなら、そのほうがしっかり休まります。その使い方は昼休みの「緑」の使い方にまとめました。この記事が扱うのは、その最小版です。席を立てないときの、40秒の視覚的な休憩です。

今日から試す「40秒、緑に目を移す」

やることはシンプルです。集中が切れきる前に、視線だけを緑に移します。

  1. 集中が切れかけたと感じたら、席は立たず、40秒だけ視線を緑に移す
  2. 見る先は、窓の外の木・街路樹・机の観葉植物。なければ緑の写真でよい
  3. その40秒はスマホを見ない。通知や文字は注意を使う側なので、緑だけをぼんやり眺める
  4. 40秒たったら、今やる一手だけに注意を戻す
  5. また集中が鈍ってきたら、1に戻る

ポイントは、限界まで粘ってから休まないことです。切れきる前に、短く目を移す。研究で差が出たのも、ほんの40秒の眺めでした。

短く目を離すこと自体の効き方は短い中断が注意の低下を防ぐでも扱っています。この記事は、その「目を離す先」を緑にする話だと考えてください。

集中を仕組みで支える発想は、集中の作り方でもまとめています。

うまくいかないとき・向いていない場面

続けても手ごたえがないときは、そもそも見る先に緑がないことが多いです。灰色の壁や書類だけを見ても、研究が差を見つけた条件とは違います。窓の外の緑や、緑の写真を1枚、視界に用意しておくと動きやすくなります。

効き方には個人差があります。全員に同じだけ現れるわけではありません。ここで扱っているのは、あくまで日々の注意の切り替えの話です。心身の不調そのものへの対処ではないので、つらさが続くなら受診を先にしてください。

向いていない場面もあります。会話や運転など、視線を外すと危ない作業のさなかに無理に組み込むのは避けてください。安全に目を移せる、いったん手を止められる場面だけで十分です。

大きな公園も、まとまった休憩時間も要りません。切れかけたら、40秒だけ緑に目を移す。次に集中が鈍ってきたとき、一度だけ試すところから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 集中が切れかけたら、席は立たず40秒だけ視線を緑に移す
  2. 窓の外の木や街路樹、机の観葉植物、なければ緑の写真でよい
  3. その40秒はスマホを見ない。緑だけをぼんやり眺める
  4. 40秒たったら、今やる一手だけに注意を戻す
  5. 合わなければ、間隔や長さを自分で調整する

出典・参考

  1. Lee, K. E., Williams, K. J. H., Sargent, L. D., Williams, N. S. G., & Johnson, K. A. (2015) 40-second green roof views sustain attention: The role of micro-breaks in attention restoration. Journal of Environmental Psychology, 42, 182-189.(150人・40秒の休憩・緑の屋根とコンクリート屋根の比較。研究の概要はメルボルン大学の発表として ScienceDaily に掲載)sciencedaily.com
  2. Berman, M. G., Jonides, J., & Kaplan, S. (2008) The cognitive benefits of interacting with nature. Psychological Science, 19(12), 1207-1212.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。