寝室は少し涼しく——暑い部屋が深い眠りを削るわけ
Health / Research Digest

寝室は少し涼しく——暑い部屋が深い眠りを削るわけ

寝苦しい熱帯夜、エアコンを何度に設定するか、いっそ消すか迷う。研究をまとめた総説では、暑い寝室は夜中の目覚めを増やし、深い眠りやレム睡眠を削ると報告されています。湿度も含めて寝室を涼しく保つ考え方と、今夜からできる手順にまとめました。

寝苦しい夜。エアコンを28度にするか、いっそ消して窓を開けるか、迷ったまま布団に入る。

夜中に何度も目が覚めて、朝はぐったり。

そんな夏の夜のカギは、寝る前の過ごし方より前に、「寝室そのものの温度と湿気」かもしれません。

暑い寝室は、目覚めを増やし深い眠りを削る

手がかりになるのが、寝室の温度と睡眠の関係をまとめた総説です。

生理人類学の専門誌に載ったもので、これまでの実験研究を整理しています。

そこで繰り返し確認されているのが、暑さが眠りを乱すことです。暑い環境では、目が覚める時間が増え、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)とレム睡眠が減ると報告されています。

しかもこの乱れは、眠り始めの前半に集中しやすいといいます。

湿気が加わると、さらに厳しくなります。蒸し暑いと目覚めはもっと増え、深い眠りとレム睡眠がいっそう減る傾向でした。汗が蒸発できず、体に熱がこもるからです。

毛布や寝間着を使う普段の暮らしでは、寒さより暑さのほうが眠りを乱しやすい、とも整理されています。

なぜ暑さがこれほど効くのか。鍵は深部体温(体の内側の温度)です。

私たちは、深部体温がゆるやかに下がるときに眠くなります。ところが暑さは、この低下を妨げます。

だから暑い部屋では、寝つきにくく、眠りも浅くなりやすいのです。

下の図が、暑い寝室と涼しい寝室での、ひと晩の眠りのイメージです。

暑い寝室と涼しい寝室での、ひと晩の眠りの深さを左右に並べて比べた図。縦軸は上が覚醒、下が深い眠り。左の「暑い・湿気た寝室」は、眠りの深さの線が覚醒と浅い眠りの間を何度も往復し、深いところまで下りず、目覚めが増え深い眠りが減る様子を示す。右の「涼しい寝室」は、線がなめらかに深い眠りまで下りてとどまり、寝つきやすく深い眠りが保たれる様子を示す。暑さと湿気は深部体温が下がるのを妨げ、涼しさはその流れを助けることを表した、仕組みのイメージ図
図1: 暑い寝室は目覚めが多く浅い。涼しい寝室は深いところまで下りていく(当サイト作成)

見てのとおり、暑い側は目覚めが多く浅いまま。涼しい側は、深いところまで下りていきます。

涼しい寝室が、深い眠りを後押しする

では、涼しくするとどうなるか。

若い男性7人を対象にした実験があります。ひと晩の室温をゆるやかに下げた夜と、一定に保った夜を比べました。

下げた夜は、深部体温の底がより低くなり、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)の時間が長くなりました。

参加者が7人と少ない小さな研究なので、これだけで言い切ることはできません。

ただ、もっと大きな無作為化の研究でも、眠っている間に体を穏やかに冷やすと深い眠りが増えたと報告されています。

方向はそろっています。体から熱がうまく逃げると、眠りは深いほうへ向かいやすい。

日本の夏と冬に、どう落とすか

日本の夏は、夜も気温が下がらない熱帯夜が続きます。

ここで「電気代がもったいない」とエアコンを消すと、寝室に熱と湿気がこもりがちです。

暑くて何度も目が覚める、寝汗で寝間着が湿る。それは、寝室が暑すぎるサインかもしれません。

湿度の高い日は、温度を下げるだけでなく、除湿を足すのも手です。同じ温度でも、じめっとした空気は体感の暑さを強めます。

冬は逆に、暖房のつけっぱなしで寝室がこもることもあります。乾燥と暑さで、明け方に喉がからからになって目が覚める、というパターンです。

夏も冬も、めざすのは「涼しくて、乾いた空気」です。

今日から試す、寝室の整え方

やることは、寝室を涼しく乾いた状態に近づけるだけです。

  1. 布団に入る前に、寝室が暑くこもっていないか手のひらで確かめる
  2. 熱帯夜はエアコンを我慢せず使い、涼しいと感じる範囲に保つ
  3. 湿度が高い日は除湿も使う。同じ温度でも、暑さのストレスが下がる
  4. 冷やしすぎない。寒さは掛け布団や寝間着で調整する
  5. 数日ためして、自分が眠りやすい設定を探す

ひとつだけ、注意があります。「涼しく」は「寒く」とは違います。

寝具を使う普段の暮らしでは、寒い部屋にすれば眠りがぐっと良くなる、というわけではありません。

冷えは心臓や自律神経に負担をかけることもあります。だから寒さそのものは寝具で防ぎ、部屋の空気を涼しく保つ。この順番がコツです。

効き方には個人差があります

ここで紹介したのは研究から見えた傾向で、医療のアドバイスではありません。

効き方には個人差があり、誰にでも同じように効くとは限りません。これは治療ではなく、示された傾向として受け取ってください。

温度の感じ方は、年齢や体質、その日の体調でも変わります。エアコンの使い方に持病の不安がある人は、主治医に相談してください。

寝つけない、途中で何度も目が覚める。そんな夜が何週間も続くときは、寝室の工夫だけで抱え込まないでください。

背景に体や心の不調が隠れていることもあります。早めに医療機関へ相談してください。

眠りの土台になる生活リズムは睡眠は長さより規則正しさ、夜の光とのつき合い方は夜の光と睡眠にまとめました。

体を温めてから眠る入浴のタイミングは就寝前の入浴が参考になります。

睡眠まわりの小さな工夫は、健康の柱でも扱っています。

今夜はまず、エアコンを消さずに、寝室の空気を少し涼しく。それだけで、眠りの入り口は変わるかもしれません。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 布団に入る前に、寝室が暑くこもっていないか手のひらで確かめる
  2. 熱帯夜はエアコンを我慢せず使い、涼しいと感じる範囲に保つ
  3. 湿度が高い日は除湿も使う。同じ温度でも暑さのストレスが下がる
  4. 冷やしすぎない。寒さは掛け布団や寝間着で調整する
  5. 眠れない夜が何週間も続くときは、自己流で抱え込まず医療機関に相談する

出典・参考

  1. Okamoto-Mizuno, K., & Mizuno, K. (2012) Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. Journal of Physiological Anthropology, 31(1), 14. DOI: 10.1186/1880-6805-31-14pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Togo, F., et al. (2007) Influence on Human Sleep Patterns of Lowering and Delaying the Minimum Core Body Temperature by Slow Changes in the Thermal Environment. Sleep, 30(6), 797-802. DOI: 10.1093/sleep/30.6.797pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Herberger, S., et al. (2024) Enhanced conductive body heat loss during sleep increases slow-wave sleep and calms the heart. Scientific Reports, 14, 4669. DOI: 10.1038/s41598-024-53839-xpmc.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。